これからの時代に外国語を学ぶ/教える意義について考えてみる
あと一週間で2ヶ月の育休が終わりを迎えます。
成長著しい娘の姿を毎日見られることが嬉しい一方、そんな日々もあっという間に過ぎ去ってしまうという虚しさもあり、やや複雑な気持ちです笑
さて、今回は自身の経験を基に、将来翻訳/通訳によって代替されうる外国語習得の意義について、考えをまとめてみました。外国語を学ぼうとしている方、教えようとしている方にとって少しでも有益な情報になれば何よりです。
なお本記事では、外国語 = 英語としています。私には英語の経験しかないためです。
その他言語について、本記事に述べていることが必ずしも当てはまるわけでは無いと思うので、予めご了承ください。
キッカケ:英語を学ばなくて良い時代になるかも
先日、前職で関わりのあった方々と久しぶりに食事をご一緒した際に、産まれた娘の子育てについて話す機会がありました。
私は、これまでの仕事を通じて培ってきた英語*1を、できる限り娘に話す/教える機会を作っていきたいと話しました。外国語習得による可能性の幅の広がりは、昨今Twitterなどでも色んな方が述べています。まさにそれらの意見と一緒で、私も親として娘に提供できると思っているからです。
すると、それを聞いていた一人がこう言うのです。*2
子どもが成長した10年・20年先、高精度な同時自動通訳が出てきてもおかしくない。わざわざ英語を学ばなくて良い時代になるかもしれないのに、教える意味はあるのか?
たしかにそうだと思いました。現にGoogleアシスタントは会話を通訳してくれるようになりました。Google先生に英文を突っ込んで翻訳を依頼することが日常茶飯事な方も少なくないはずです。上記のような時代は着実に近づいてきているのは事実なのです。
それでも私の答えは『教えるべき』でした。
だいぶお酒も入っていたので、その時うまく言語化できていたかどうか微妙ですが、以下の3つが理由として挙げられます。
- 伝え方にメリハリがつくようになる
- 自動通訳にも限界があり、結局どこかしらで人間の言語処理が必要になる
- 目の前の相手を100%理解する純粋な楽しさがある
ここから先は、これら3つの理由についてもう少し詳しく述べます。
意義1:伝え方にメリハリがつくようになる
これは日本人が英語を学習したとき、特にEnglish Speakerと会話するようになってから感じることです。
日本人の多くは、今現在も起承転結のお作法で育っていることもあり、結論は最後に述べることが良いとされている風潮があります。*3
ところが英語は逆です。結論ありきで詳細が論じられます。
例えば、
"Are you free this weekend?" (今週末は暇ですか?)
と聞かれると、日本人の場合は『親と買い物の予定があるから、暇じゃない』という答え方をするはずです。
『暇じゃない。親と買い物の予定があるから』という答え方をする人はあまりいないのではないでしょうか。
後者は英語的な回答です。もっと言えば『暇じゃない』だけの場合もあります。そこから質問者が理由を聞くという流れです。さすがにプライベートの理由まで突っ込んで聞くかというと微妙ですが、例があんまり良くなかったということで・・・笑
この違いを理解していてこそ、言語に応じた適切なコミュニケーションが取れると考えており、こと日本人においては英語的な結論ありきのコミュニケーション能力を取得することによって、メリハリのある伝え方ができるようになります。
ちなみに、上記の言語間の違いを考慮せずとも自動通訳はできるはずですが、お互いの文法を知らない状態で通訳を介して話すと、ぎこちないコミュニケーションになる可能性があります。
日本人が『今週末暇ー?』と聞いて、相手が『暇じゃない』と答えるだけだとぶっきらぼうに感じちゃいますよね。
逆も然りです。English Speakerからしてみると『Yesなの?Noなの?結論は?』となるはずです。日本のビジネスパーソンにとってはお馴染みの質問ではないでしょうか? これがビジネスパーソンになる前から使い分けができるようになっていると、日本人としてはひとつの武器になりますよね。
意義2:結局どこかしらで人間の言語処理が必要になる
Google翻訳が常に完璧ではないように、会話の自動通訳も常に完璧な状態ではいられないと考えています。*4
そんな状態で、会話や議論が衝突したり停止するとどうなるでしょうか?別の言い回しで伝えるなど手を打つ方法はありますが、結局人間の言語処理のほうが速さ、クオリティともに有利になるはずです。
私は自動通訳をクルマの自動運転のレベルと同じように考えています。
参照元:自動運転 もろ刃の先陣 アウディ、市販初の「レベル3」 :日本経済新聞
自動通訳もレベル3くらい、つまり緊急時は人の言語処理が必要になる段階、までは将来訪れそうですが、コンテキストによって変化する文法や単語があるなど、クルマ以上に細かい処理パターンが多いでしょうしその先の完全自動通訳はなかなか難しい気がしています。この辺り詳しい方がいたらお話聞きたいです。
クルマの自動運転レベル3の定義は、『条件付きの自動運転。緊急時をのぞき運転を車に任せる』です。クルマの場合でも緊急時には人が操作する必要があり、そのためにはクルマを運転するスキルや資格が必須です。
自動翻訳の場合も同じで、外国語を話せる土台があって初めて自動翻訳を最大限活かせるものだと思っています。
意義3:目の前の相手を100%理解する純粋な楽しさ
相手の生の声を理解する喜びというのは、恐らく通訳での代替は難しいでしょう。これは機械を介した通訳に限った話ではありません。
スポーツにおけるヒーローインタビューの通訳を聞いていて、味気なさを感じたり、盛り上がりに欠けたことがあれば、上記の意味がお分かりいただけるかと思います。
終わりに
以上のような考えがあり、まだ0歳2ヶ月の娘を相手にたまに英語を話している筆者です笑
現時点で伝わっているかどうかは分かりませんが、将来どういう形かで今の取り組みが活きてくれればなぁとせつに願うばかりです。
あぁ、娘ホント可愛い・・・
私鉄3.0 - 東急ブランドの強さは"まちづくり"によるもの
イギリスから帰ってきて川崎市の鷺沼(田園都市線)に住んでいるのですが、東急沿線は他の私鉄各社よりも沿線住民の東急への愛着がわりとあるような気がしており*1、東急にはブランド力があるなあと感じていました。
そんな折に『私鉄3.0』という本が出版され、読んでみるとこれがなかなか面白かったので簡単にまとめます。
私鉄3.0 - 沿線人気NO.1・東急電鉄の戦略的ブランディング - (ワニブックスPLUS新書)
- 作者: 東浦亮典
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2018/12/08
- メディア: 新書
- この商品を含むブログを見る
記事では自分の仕事に活かせそうな部分のみに絞っているので、会社の歴史やどの街が盛り上がっているかというような内容はぜひ本を読んでみてください。これはこれで面白いです。
本書について
東急電鉄の現執行役員の方が、東急の成り立ちからこれまでのまちづくりにおける取り組み、その過程でのこだわりや工夫を紹介しています。また巻末には、今後の私鉄各社が歩むべき方向性についても筆者の視点で書かれています。
まちづくりが目的、その他は手段
個人的な感覚としては東急 = 鉄道のイメージでした。それは他の私鉄会社でも同様の感覚です。
ところが東急における鉄道の位置づけは、あくまでもまちづくりにおける利便性向上のための手段と記されています。故にまちづくりへの力の入れ方が他社と比較して強く、洗練度合いが高いのが東急の特徴となっているようです*2。
目的がまちづくりとなると、鉄道以外でのサービス展開も必要になりますが、東急はスーパーや不動産、ホームセキュリティ、電力会社など多岐に渡る(社数にすると200を超える)サービスを展開しています*3。
結果、街で生活を営む上であらゆることが東急によって実現されてしまうので、東急というサービスの集合体に信頼や愛着が湧くようになります。
複数のサービスを展開する企業において、
各サービスがそれぞれの世界を実現しに行くのではなく、それらが一つの世界(東急では街)を築き上げることで、顧客の信頼・愛着の向き先は世界(街)となり、またそれを創る企業になる
わけです。
目的の実現が手段であるサービスのブランド力向上に繋がる
東急が手がけるまちづくりによって街の洗練度合いが高いことは前述しました。
それぞれの街が洗練され、そこに住む人たちの街に対する愛着が芽生えると、街の評判が高まります。その結果、その街に位置する駅のブランド力も高まります。
これが各駅で発生するとどうなるでしょうか。
良い駅のイメージが、良い"路線"のイメージに変わります。これが東急線沿線全体のブランド力の源泉となっているようです。
目的の実現が、手段であったサービスのブランド力向上にも繋がっています。
企業としてのブランドイメージの強いリクルートも、各カンパニーが"個人と企業をつなぐ"というミッション(目的)を実現すべくサービスを展開して、結果として各サービスのブランド力が強まっている、という良い例な気がします。
安心安全あってのまちづくり
前項までとは話の筋が異なりますが、本書では渋谷の再開発についても取り上げています。
渋谷の街を歩いていると、高層ビルが乱立していっている表面しか見れないですが、実は地下に巨大な貯留槽を造ったり、歩行者導線を整備しています。これまで渋谷が弱みとして持っていた豪雨による冠水リスクや鉄道各線への乗り換えの不便さの解消を前提とした再開発になっているようです。
目新しい高層ビルを建てていくら体裁だけ整えても、災害に対する脆弱性が改善されていなかったり、それぞれのビルやサービスへの行き来が最適化されていなければ"街"としての価値を最大限に発揮することはできないのです。それは最終的に東急のブランドに返ってきます。
本書では『安心安全と快適便利が同居する街』と表現されていますが、これはWebサービスやアプリを作る我々にとっても肝に命じておくべきことかと思います。
まとめ
- 目的と手段の履き違えは個人的にも常に気をつけている部分ですが、そこさえクリアできればサービスの本質的な改善のみならず、企業としてのブランドの強化に繋がってくる
- 更にそれがサービスのブランド力に返ってくる、という好循環が生まれる
- 安心安全はサービスの価値を最大限発揮する上で必要不可欠
まちづくりを目的に様々なサービスを展開する東急の心構えは、形は違えどお客さまにサービスを提供する方には参考になるのではないでしょうか。
27歳になりました
ご無沙汰です。
ブログの更新を怠って1年経ってしまいました。継続力・・・
記事について
以下の備忘録です。
- 26歳の振り返り
- 27歳でやりたいこと
つい先日、27歳の誕生日を迎えました。振り返りをする中で、業務外でのアウトプットが少なすぎると反省したこともあり、そういった反省や学びを含めて本ブログに残していこうと思った次第です。
自分にとって学びになった点は目立つように記しています。基本的には自分の振り返りのためのものですが、誰かにとって有用な情報となれば幸いです。
26歳の振り返り
2018年は2017年に続き、仕事でもプライベートでも変化の多い年でした。特に仕事では初めてのことだらけで奔走していました。
仕事(W)とプライベート(P)まとめて、特に自分に影響を与えた出来事を時系列で振り返っています。(本記事における見解・意見は全て私個人に帰属するものであって、会社に帰属するものではありません)
W: アプリのリブランディング
2018年はじめから春頃までは既存のアプリ(当時は日本のプロダクトと似た見た目)の上で、成長に繋がりそうな策を見つけては改善に向けて色んな施策を打っていました。
手応えのあるものはいくつかあったものの、いわゆるムーンショット的なものは無く、かつ日本から輸入したプロダクト。よりイギリスのテイストに合わせるべくリブランディングのプロジェクトが発足されました。
フォーカスすべきペルソナを確立し、ユーザーインタビューを重ねて新しいコンセプトのもとリブランディングを実施。
インタビューではペルソナに該当するユーザーがロンドンに限らず他の地方都市にも存在するか、実際にその場でも仮説が当てはまるかどうかを入念にチェックしました。これはロンドンは現地の人から見ても『純イギリスではない(人種/文化の多様性、所得格差など)』ためです。ロンドンだけで機能するプロダクトを作っても仕方ない。文化や経済的な違いがあっても尚仮説が通用するかどうかを確認するプロセスは新鮮でした。(日本にも東京と地方では感覚が異なることもあるはずなので、これは活きるはず)
リブランディング後は、思い描いていたターゲット層にリーチして出品を促したり出品の教育を行うなど、プロダクト、マーケティング、CSの全方位で出来ることを実施しました。
W: GDPR
リブランディングが進む中、GDPR(General Data Protection Regulation = EU一般データ保護規則)に従う必要があるとのことで、プロダクトへの変更箇所については当時UKのプロダクトの細部までを一番把握していた自分が責任を負うことになりました。
詳細な対応内容については割愛しますが、主に以下のことを実施しました。
- お客さまの個人情報がプロダクトの中で安全に取り扱われているかの確認
- リスクのあるものについては、当局が推奨する方法に従いプロダクトの改善を行う
特に頭を悩ませたのは"1"のプロセスで、当局も具体的にどのデータがリスクに該当するかというのは細かく明示していないため、正解が分からない状態で進める必要がありました。ここで重要となる判断軸は、なぜ個人情報を持つ必要があるのかをお客さまの視点で説明できるかというものでした。当局に問われた際に、いかにその正当性が理にかなっているかが大事になります。
GDPRは企業ではなくエンドユーザーを守るための規則です。その原則に沿うように社内の各部署やコンサルと協力することで一つ一つリスクを潰していきました。結果的にプロダクトやデータベースでの情報の持ち方にもかなり手を入れることになりましたが、情報漏えい等で頻繁に取り沙汰される昨今、事前対策的に本案件に着手できたのは良かったのではないかと思っています。
P: 子を授かる
7月に妻が子を授かりました。子作りを始めてわりとすぐのタイミングだったため、妻に妊娠を伝えられたときは早すぎてあまり実感が湧きませんでした。出産が迫っている今はお腹に声をかけて反応を待つ毎日です。反応して動いてくれると可愛くて堪りません。
病院ももちろんロンドンで通っていたのですが、看護師として産婦人科でも働いていた妻が衝撃を受けていたのが (私は比較できないのでピンとこなかった)、
- 全部無料 (イギリスの医療費は基本無料で出産も例外ではない。帝王切開の場合も)
- 日本では妊娠中期からはだいたい2週間に1度エコーを受けるのですが、イギリスのエコーは妊娠中2回だけ
- 体重制限が無い (恐らくそもそも母体が大きいから10kgくらい増えても負担にならない)
- ダウン症の検査が手厚い
- などなど
結果として年末には日本に帰ることになるのですが、この頃はロンドンで出産をするつもりで行動していたため貴重な体験ができました。
W&P: 日本への帰任
リブランディングやGDPRを終えたあとも、登録率を上げるための施策を実施したり改善のために色々と動いていました。(この登録率向上プロジェクトのときに、オンラインユーザーテストを実施したのですが、オフラインよりも素早く検証できて良かったので、また時間があるときに記事にでもできればと思います。書いていてちょっと疲れたきたので笑)
そんな中10月くらいに帰任が決まり、以後は日本のHQでのアサインになることが決まりました。出張で来ていた期間を含めると、ほぼ2年ロンドンで仕事をさせてもらいました。
各プロジェクトで沢山の学びがあったのはもちろん、プロジェクトの進め方(e.g. スクラムやユーザーテスト、ステークホルダーとのコミュニケーション)でも色々試して失敗して成長の糧になったのではないかと思います。
以上が26歳の振り返りです。
27歳でやりたいこと
W: プロセスの進化への貢献
27歳(1月生まれなのでほぼ2019年)は、プロダクト作りのプロセスをどんどん進化させることに力を入れていきたいと考えています。
12月に日本に帰ってきてから約2ヶ月が経ちました。
日本のHQでの仕事にも慣れてきて、新しい期が始まったところです。(実は入社以来ほとんど日本の仕事はしていなかったので、2年以上会社に在籍はしているものの帰任したときには新鮮な気持ちでした。)
日本に帰ってきて特に感じるのは、ロンドンで働いていたときほどAgileではないこと。どんなに良い企画が並んでいても、それを実現するスピードが遅いといつまでも理想とする世界には近づけません。テクノロジーの進歩が目まぐるしい昨今、近づくどころかむしろ遠のくことすらあるのでは無いかと危機感を持っています。
もちろん日本とロンドンでは組織の規模感や影響を与えうるお客さまの数も圧倒的に違うため、全く同じスピード感というわけにはいかないかもしれません。ただ、その中でも出来ることは沢山あると思っています。
幸い組織としても進化していこうという風潮が常にあるため、ロンドンでの経験を含め自分の価値を存分に発揮できるように努めていきます。
P: 何でも頼れるパパになる
前述の通り、娘が3月に産まれる予定です。
ありがたいことに会社で育児休暇を長く取得できる制度もあり、出産直後から妻だけに頼らずに自分も育児に参加しやすい状態になっています。制度をフル活用し『仕事をするパパ』ではなく、ママに負けない『何でも頼れるパパ』になれるように率先して育児に参加していく予定です。
楽しみすぎて仕方ないので、早く無事に産まれてきて欲しい・・・!!!
その他にも余暇を使って、アプリを作りたい欲もあるのですが、育児の様子を見つつになりそうです。
以上、26歳の振り返りと27歳の抱負でした。
イギリスのカード事情③ - Curve: オールインワンカード
相変わらず天候の悪いロンドンですが、気温は徐々に上がってきている気がします。比べて東京は恐ろしいほど気温が低くて、また雪の日も多いようで・・・スノボ好きの筆者にとっては羨まし(ry
さて、今回はイギリスでのクレジットカードとその周辺のあれこれを紹介しようと思っていたのですが、記事を書こうとしていた矢先、便利すぎる代物(カード)が手に入ったので寄り道してそちらを紹介しようと思います。
Curve - オールインワンカード
Curveは複数枚のクレジットカードやデビットカードをアプリ上で登録して、一つのカードとして持ち歩けるオールインワンカードです。カードで財布が膨らむ人にとってはとてもありがたいプロダクトです。(その他のメリットは後述します)
www.imaginecurve.com
(招待コード: 3UK6D , £5獲得できます)
2015年にロンドンで設立された会社で、2016年2月より個人事業主・スモールビジネス向けにClosed Beta版をリリース、2017年末から一般公開されました。*1
この界隈に明るい方だと一昔前に少し盛り上がったCoin, Plastc, SWYP, Stratos, Fuzeなどを思い出されるかもしれません。それらプロダクトとCurveの比較も後述しています。
Curveについて
機能
Curveの機能は至ってシンプルです。
前回の記事で紹介したMonzoのようにカードとアプリが密に連携しています。
サービスに登録するとCurveのデビットカードが送られてくるので、アプリでアクティベーションして、Curveで使いたいクレジット/デビットカードを登録するだけです。
あとはCurveのカードを持ち歩いて支払いの際に普通のカードと同様に決済をします。もちろんコンタクトレス対応。
決済をしたいカードを切り替えたい場合は、アプリでタップして指定するだけです。
(画像について)
- 左: カードは(たぶん)無限に登録できます。日本のクレジットカードも登録できて、しかもシルエットまで自動的に取り込まれるので驚きです。iOSのような挙動でカードを入れ替えられたり削除したりできます。
- 中: 各カードでの取引の詳細も確認できます。ちなみにCurveのマークがついているカードが現在決済で使用中のものです。MonzoやRevolutのようなプリペイドカードも登録可能です。
- 下: カードの使用を切り替えたい場合は、使いたいカードの上でタップするだけです。即時に切り替えられます。
全てのカード決済をまとめて見ることも可能です。
また、MonzoやRevolutのように決済対象の種類(食事、日用品、など)も表示されます*2。
割り勘機能はありませんが、MonzoやRevolutのアプリ上で実施できるので問題ありません。
決済の仕組み
各種カードを一枚のカードに紐付けてそれだけで決済を実現しているCurveですが、どのように機能しているのでしょうか。
詳細には把握できていませんが、おおよそ以下のようなフローで決済が行われているのだと推測しています。
- ユーザーがCurveのカードを使って決済をする。このタイミングではCurveが支払いを実施
- CurveがCard Issuerに対してPayPalを介して支払いを請求*3
- 支払い完了 (Card Issuerの取引履歴で支払いが確認できる状態)
ちなみにMonzoなどIssuerのサービスから取引履歴を確認してみると、Curveを介して決済した取引には必ず"CRV"というPrefixがついています。そのため、どの決済をCurveで実施したかはIssuer側の履歴からも把握できます。
ビジネスモデル
Curveは基本使用料を無料としていますが、ATM引き出しと海外為替にのみ手数料がかかります。
また独自のリワード(報酬)プログラムを持っており、クレジットカード会社のように加盟店手数料を得ているのではないかと見ています。
例えば、イギリスでは薬局大手のBoots*4やArgos、GAPなど*5。決済額の1.5% ~ 3%のキャッシュバックでかつ有名店の加盟も多いので使い勝手がいいですね。
Curveを使うメリット/デメリット
メリット
デメリット
- 何か決済で問題が発生したときに払い戻しをしてもらえない可能性が高い (PayPalなどのThird Partyを介した取引はSection 75の対象外になるため。通常のChargebackには対応している*7 )
- クレジットカード会社の元々のリワードプログラムが利用できなくなる (例: 通常1.5%のポイントが"ユニクロ"で購入の場合は2倍!など。取引先が常にPayPalになるため)
一見、カードが多い人だけにメリットがあるように思えますが、元のカードを保護しておくという意味では一枚しかクレジットカードを持っていない人でも使う価値があると言えます。
前述のとおり、元のリワードプログラムは使えなくなりますが、Curveにも独自のリワードが存在するのでそこまで大きなデメリットだとは思いません。払い戻し問題は少しネックなので、高額な決済をする場合は元のカードを使ったほうが無難そうですね。
従来のオールインワンカードとの違い
サブスクリプションモデル vs 基本無料
Coin, Plastc, SWYP, Stratos, Fuzeのうち、SWYPとFuze以外はすでにサービスの提供を終了してしまっているのですが、これらサービスのカードに共通していることはサブスクリプションモデル(定期購入型モデル)でした。*8
対してCurveは基本的に無料で利用できます。
では、なぜ従来のサービスはサブスクリプションモデルだったのでしょうか。Curveのように基本使用料を無料にはできなかったのでしょうか。
それは発行するカードに大きな違いがあったからだと見ています。
コストのかさむ特殊なカード vs 通常のデビットカード
前述のCoin, Plastc, SWYP, Stratos, Fuzeは、使用するクレジット/デビットカードの切り替えをスマホ等を介さずに実施するために、サービスのカードが通常のクレジット/デビットカードと異なる特殊なものを採用しています。
こちらはStratosのコンセプトムービーです。
Squareのようなカード読み取り端末が登場したり、カード自体も振って切り替えたり等など・・・見るからにコストがかかりそうですよね。
対してCurveは一般的なデビットカードです。
全くコストがかからないわけではないですが、少なくとも電子カードやその周辺端末と比較すると費用は抑えられそうです。
かつCurveは基本的に無料でユーザーの数は集まりやすいため、ユーザーが使いさえすれば取引に応じた手数料*9で少しずつ売上を上げていけるはずです。
他にも電子カードのデメリットとして、バッテリーの持続時間や登録できるカード数に上限があったりなど、ユーザビリティの観点でもサブスクリプションするには少し勇気のいるプロダクトのだったのかもしれません。
まとめ
Curveについて
- 複数枚のクレジット/デビットカードを一枚にまとめられるカード
- 見た目は一般的なコンタクトレスデビットカード
- そのため財布のかさばりを無くせる
- アプリで簡単にカードの追加/切り替えが可能
- 決済対象に応じて独自のリワードプログラムあり
- 高額決済の場合は元のカードを使ったほうが良さそう
- 基本的には無料
届いてからまだ一週間ほどしか使用していませんが、これまでのところ元のカードたちは一切使わずに生活できています。とにかく便利です。イギリスにお住まいの方はぜひ。
これまでのオールインワンカードはどれもあまり上手くいかずに撤退しているものが多いため、Curveには成功してほしいものです。
*1:アプリ自体は一般公開前からダウンロード可能でしたが、登録後は『対象外なので待っててね』と表示されているだけでした。
*2:位置情報はありません
*3:ここでPayPalとしているのは、Revolut上の取引履歴でCurve経由の決済にPayPalのロゴがついていたため
*4:日本にも以前あったようですが撤退しました
*6:Amexを持っていないので試していませんが、理論上できそう?
*7:Am I covered by section 75 of the Consumer Credit Act? – Curve
*8:Stratosは新規カードの発行を終了。SWYPも元々のモデルは終了している模様。
*9:前述のとおり、現在はATM引き出し手数料と海外為替手数料のみ
イギリスのカード事情② - Monzo: 流行りのプリペイドカード
先日、髪を切りに行ったのですが、お店が突如移転して切ることができませんでした。
店頭で予約していたにも関わらず何も連絡なしに・・・適当笑
Treatwellで見つけて行き始めた場所で、家からも近くカットも上手で気に入っていたため残念です。
結局、代わりの場所を再度Treatwellで探してカットしてきました。Treatwellは、日本でリクルートが展開するホットペッパービューティーみたいなものです。二年前くらいに欧州のリクルートが子会社化しました。*1
ホットペッパーはサービスで予約してお店で支払いですが、Treatwellはアプリ上でも支払いができます(カード支払い/PayPal支払い/現地払いのいずれかを選択)。
イギリスにおいてカード支払いの際に、筆者が頻繁に利用するのが今回紹介するプリペイドカードのMonzoです。
Monzo - 流行りのプリペイドカード
プリペイドカードとしてのMonzo
Monzoは、アプリからお金をTopUp(チャージ)してデビットカード/クレジットカード同様にカード支払いに利用できるプリペイドカードです。日本だと似たサービスとしてLINE Payカードがあります。
2016年3月にPublic Beta版がローンチし、ロンドンを中心に話題になっています。以下に公表されているユーザー数とトランザクション額の推移をまとめてみましたが、順調に伸びているように見えます。あくまでも平均ですが、2017年5月時点でユーザーあたり£1,250の消費ってなかなかじゃないでしょうか。
- 2016年3月:300ユーザー/150万ポンド*2
- 2016年10月:5万ユーザー/4500万ポンド*3
- 2017年1月:10万ユーザー/1億ポンド*4
- 2017年5月:20万ユーザー/2.5億ポンド*5
銀行としてのMonzo
本記事では"プリペイドカード"としての機能を中心にMonzoを紹介していますが、今年の12月には正式にATM(銀行)カードとしてアップデートされました。これによって、Monzoは銀行と変わらないサービスを提供できるようになりました。具体的には以下の機能や内容が追加されています。
- ユーザーごとにSort codeとAccount numberを付与 (口座番号のようなもの)
- 他行への振込が可能に。逆も同様
- お給料をMonzoの口座に振込指定、といったことも可能に
- 口座引き落としが可能に
- FSCS protection(ペイオフ)の適用対象に (銀行が破綻したときの保険のようなもの)
利用方法
(普通口座化の前のスクショなので少し古いです)
MonzoのアプリはApp Store, Google Play Storeのいずれにもあります。
サービスに登録して最初のTopUpが完了すると5営業日以内でカードが送られてきて、デビットカードやクレジットカード同様に店舗やオンラインでMonzoを使ったカード支払いが可能になります。TopUpはイギリス国内で発行されたデビットカード、もしくはそのカードを使ったApple Pay/Android Pay/銀行振込によって行います。
何が便利なのか
ただのプリペイドカードだと『TopUpが面倒。デビットカードやクレジットカードでいいのではないか。』と思われる方もいらっしゃるはずです。しかし、利用者が増えてきているということは、それだけ提供されているサービスが便利だからとも言えます。
そこで筆者がこれまでMonzoを使ってきて便利だと感じたポイントを以下に挙げてみます。
取引の可視化 = お金の管理が容易に
Monzoは物理的なカードとアプリが強く紐付いているサービスです。Top upをしたいときはアプリから行う必要があるのはもちろん、カードを使って決済した取引は全てアプリに通知/記録されます。銀行のデビットカードやクレジットカードは取引の反映が遅いことが多いのでこれは非常に助かります。
ちなみに記録される内容は以下の4つです。
- 決済額
- お店の名前
- お店の位置情報
- サービス属性 (外食、交通、買い物、など)
位置情報やサービス属性は、決済端末に入っているのでしょうか?
大半の決済でそれらの情報も正確に記録されます。
これにより、月にどの属性でいくら使ったのかを把握できるようになります。決済サマリはアプリ内で確認できます。
悪用防止に有効
可視化によって、自分以外が使った取引が一瞬で分かるという恩恵を受けられます。大半の取引はカードで決済した直後に通知が来ます。そこで覚えのない取引があれば、アプリからカードの使用を一時凍結することもできます。
またプリペイドカードの利点として、TopUpした額しか使えないというのも悪用の防止という観点では非常に有効です。給料振込みに使っている銀行口座のデビットカードを持ち歩いて盗まれたりしたら大変ですからね。。。
外貨取引手数料がとにかく安い
国外で発行されたクレジットカードを使って決済をすると、その度に外貨取引手数料*6が引かれています。Monzoはこの外貨取引手数料のレートが極端に低いです。
そのため、筆者はイギリスから(日本を除く)海外旅行をする際にも、クレジットカードやデビットカードの代わりにMonzoを使って決済をしています。
また、ATMでの外貨引き出しも月に£200までは手数料がかかりません*7。例えばスペインに旅行する際には、基本的にカードで決済して、必要なときにだけユーロ紙幣をATMで引き出すことで、手数料を無駄に取られないように工夫することもできるわけです。
割り勘機能
日本ではLINE Payやペイモ、Kyashといったサービスが割り勘機能を提供していますが、これと同じような機能がMonzoにもあります。
Kyashと同様で、サービスにまだ登録していない人に対しても支払い請求が可能です。
カード別々払いを許容しているお店もありますが、お互いに面倒くさいので一人がとりあえず支払ってから後ほど割り勘という場面も多いので重宝します。
類似サービスについて
Monzoの他にRevolutという同じようなサービスがあります。
www.revolut.com
Monzoは銀行としての機能をベースにサービスを拡充させているのに対して、RevolutはTopUpしたお金を使ってサービス内で様々な取引を実現させるように動いているようです。(例えばCryptocurrencyの取引や保険の加入など)
MonzoがプリペイドカードからATMカードに切り替えた際に、一時的にApple Payが利用できず使い物にならなかったため、Revolutにも登録しました。感想としては以下のとおりです。
- クレジットカードでTopUp可能(日本のクレジットカードも使えます)*9
- カードの配送料を取られるのはツラい(Monzoは無料)
- カードのデザインがMonzoよりもかっこいい*10
- その他はMonzoと特に変わらない
まとめ
Monzo:
- アプリからお金をTopUpして決済に使用するプリペイドカード
- アプリで取引の可視化されるため、お金の管理が容易になる
- 取引がすぐに通知されるため、悪用防止に有効。いざとなればアプリから凍結できる
- 外貨取引手数料が安いため、海外でも重宝する
- 日本のLINE PayやKyash同様に割り勘機能があり、サービスを使っていない人にも請求できる
- ジョイントアカウント(夫婦共同名義の口座)の代わりとして使える
プリペイドカードと聞くと、予めお金を入れておく面倒臭さが先行してどうも使う気にならなかったのですが、Monzoを使いはじめてから考え方が一気に変わりました。カスタマーサポートの対応も早く、何か問題があってもストレスなく使えるので素晴らしいです。今後スケールする中で対応のスピードや質の担保に課題が出てくるかもしれませんが、どう手を打ってくるかは注目&参考にしたいです。
前回はイギリスのカード事情全般、今回は流行りのプリペイドカードについてを紹介しました。次回はクレジットカードについて紹介します。
*1:欧州の美容オンライン予約サービス「Treatwell」を展開するTreatwell社の株式の取得(子会社化)のお知らせ | リクルートホールディングス - Recruit Holdings
*3:Monzo valued at £50 million in 'interim' £4.8 million funding round - Business Insider
*5:Monzo – 200,000 Customers and £250,000,000 Spent!
*6:カード会社や銀行にもよりますが、約3%と言われています
*7:2018年1月4日まではいくら引き出しても無料
*8:申請を通すかの判断基準は銀行や支店によって、更には対応する人によって左右されるといいます・・・
*9:ただし、TopUpのたびに手数料がかかります
*10:有料のPremiumプランに登録すると数種類のデザインから選べるようです
イギリスのカード事情① - デビットカード/コンタクトレス
前回の記事を書いてから2ヶ月近く経っていました。
天気もどんよりした日が多くなってきており、加えて日照時間が短いので*1、日光が恋しくなります。街のライトアップが綺麗になる時期でもあるので、それはそれでまた良いのですが。
今回から数回に分けて、イギリスのカード事情について触れられればと思います。
- 今回: イギリスのカード事情全般
- 次回: Monzo - 流行りのプリペイドカード
- 次々回: イギリスのクレジットカードを作ってみる
カード = デビットカード
日本ではカード支払いというとクレジットカードが真っ先に思い浮かびますが、イギリスではデビットカードがカード支払いの中で最も一般的です。
クレジットカードが後払い決済に対して、デビットカードは紐づく銀行口座を介した即時決済です。小切手による決済の代替手段として登場しました。*2
イギリスで普及しているカードは以下の4種類に分けられます。発行されている総カード数に対する割合も付記しています。
イギリスで発行されているカードの半分以上はデビットカードです。実数で言うと約5,110万枚の発行で、これはイギリスの成人の96%が所持していることになります。*4
もっともデビットカードはキャッシュカードの機能も兼ね揃えており、銀行口座を開設するとキャッシュカードとして与えられる場合がほとんどなので成人の大半が所持しているというのは当たり前といえば当たり前ですね。
(Source: UK Card Payments 2017)
上図は近年のイギリスにおける各種カード数の推移です。やや鈍化傾向ではあるものの、デビットカードのシェアは今後ももう少しは伸びていくかもしれません。ちなみに2014年にATMカードが顕著に減少していますが、これは一部の銀行などがATMカードをサポートしなくなったためのようです。
進むキャッシュレス化
イギリスはアメリカと同様にカード社会の国として有名です。
2016年の年間小売売上高はおよそ3,880億ポンド(57.8兆円)で、支払い方法の内訳で見てみるとデビットカードによる支払いが53%、クレジットカードは24%、残りが現金や小切手による支払いで、カード支払いという括りで見てみるとなんと77%という驚異の割合です。*5
マーケットなどで見かける露店の一部などを除けばほぼ全てのお店でカード支払いができるので、財布もコンパクトで済みます。カード払いのみのお店もちらほら見かけます。
日本ではドトールなどの大手カフェでさえクレジットカードが使えなかったりしますよね・・・
参考までにアメリカは支払いのだいたい50~70%がカード*6でイギリスと同様にキャッシュレス化が進んでおり、対して日本は10~20%*7でまだまだ現金での支払いが多い状況です。
ちなみに北欧ではイギリスやアメリカを差し置いて更にキャッシュレス化が進んでおり、現金の使用率が5%を下回る国もあるようです。*8
あとは最近中国がスゴいですよね。ただただ行きたい。日本にいるときに行っておけばよかった・・・
進むコンタクトレス化
日本でもSuicaなどの非接触型ICカードがありますが、イギリスではデビットカードやクレジットカードにこの機能が付いているケースが多いです。
THE UK CARDS ASSOSIATION: UK Card Payments 2017によると、現在ではデビットカードの3枚に2枚、クレジットカードの2枚に1枚がコンタクトレス機能を持っているようです。
前年度の報告では、デビットカードの2枚に1枚がコンタクトレスだったとのことでまだ伸びていますね。
日本でもよく見かけるクレジットカードを挿し込む端末にコンタクトレス機能がついており、カード所持者は端末にカードをかざすだけで決済が完了します。PINを入力する必要がないため、一瞬で決済が完了します。*9
iZettleなどのより見た目がモダンな端末もよく見かけます。(Squareを使っているお店はまだ見たことがない・・・)
またロンドンのバスは現金は一切使用できないため、必然的にコンタクトレスカードを使うことになります。*10
まとめ/雑記
- イギリスのカード支払いはデビットカードが主流
- キャッシュレス化が進んでおり、ほとんどのお店でカード支払いが可能。カード払いしか受け付けないお店も
- デビットカードとクレジットカードのコンタクトレス化が進んでおり、支払いがスムーズで非常に楽
イギリスやアメリカに観光、出張で何度か訪れてカード支払いに慣れてしまったため、最近では日本でも額を問わず常にクレジットカードを使うようになっていました。ただ日本だと未だに受け付けないお店も多いため、早くキャッシュレスが浸透してほしいなと切に願うばかりです・・・(個人間決済は日本でも面白くなってきましたけどね)
全然ブログの内容とは関係ないですが、先日お気に入りのRichmondに行ったのですが紅葉が綺麗でした。
*1:最も短い12月は16時前にはもう暗いです
*3:一括後払いだけが許容されているカード。クレジットカードに似ている。
*4:THE UK CARDS ASSOSIATION: UK Card Payments 2017
*5:THE UK CARDS ASSOSIATION: UK Card Payments 2017
*6:ケースによって利用率は異なるため。ソースはこちら。全体として考えると6割くらいでしょうか。
*8:PRESIDENT Online: 世界で加速する「キャッシュレス革命」
*9:ただし一度に取引できる額が決まっていることが多い(£30程度)
*10:クレジットカードやデビットカードのほかにOyster Cardなどのプリペイドカードが使用可能です
ロンドンのシェアバイク事情 - ofoに乗ってみた
ロンドンに来て1ヶ月が経ちました。
先日銀行口座の開設ができ、デビットカード兼キャッシュカードが郵便で届きました。日本で発行したクレジットカードや現金を使ったこれまでの不便な生活にやっと終止符を打てます・・・
イギリスはクレジット社会な上に、店頭決済にはコンタクトレス(かざすだけの)カードが主流になっているなど、ものが揃っていれば決済が非常に楽になっています。が、詳しくはまた別の機会に説明できればと思います。
今回のトピックはロンドンのシェアバイク*1事情についてです。
シェアバイクについて
時間貸し自転車
シェアバイクは一言で表現すると、時間貸し自転車のことです。
借りたいときにだけ自転車を使って、使った時間だけ料金を支払います。日本ではドコモが自治体と一緒に実施しているシェアリングサイクル*2などが有名です。
つい先日、メルカリとDMMもシェアバイク事業に参入するとの報道があり、ますます盛り上がりを見せている市場です。
Dock型とDockless型
シェアバイクは大きく二つの種類に分けられると思っています。『Dock型』と『Dockless型』です。Dock型は専用駐輪スペース間を専用の自転車を使って移動できるモデル。Dockless型は専用の自転車を使う点ではDock型と同じですが、どこで借りてもOK、かつ乗り捨て可能なモデルです。
昨年頃から特に中国で爆発的に流行っているのはDockless型のシェアバイクで、街中の至るところで黄色や赤色の自転車が置かれている光景を目にするようです。(行って体験してみたい・・・)
ロンドンのシェアバイクプレイヤー
ロンドンではこれまでDock型のSantander Cyclesの独擅場でした。ところが今年、特にここ数ヶ月でその形勢に変化が起ころうとしています。Dockless型のプレイヤーが次々と海外から押し寄せてきているのです。
Santander Cycles - ロンドン最大手/Dock型
ロンドンにおけるシェアバイクは、2010年より交通局(Transport for London)が運営しているSantander Cyclesが有名です。
£2(280円)支払うことで24時間自転車を借りられます。乗車から最初の30分は無料で走れるので、30分に一回乗り継ぎをすれば実質£2で一日中利用できます。Dockの数も多いので、見つける手間はそこまでかかりません。
現在11,000台以上が稼働しています。
上図で見てのとおり、至る場所にDockが存在しています。数字はDockに止まっている自転車の台数です。*3
oBike - シンガポール発/Dockless型
今年の1月にシンガポールで始動した乗り捨て型シェアバイクです。ロンドンでは2017年7月からHammersmith地区を中心にサービスをテスト導入中で、現在400台が稼働しています。始動から半年少しで既に10ヶ国以上で稼働しているのは驚きです。
£49(約7,300円)をデポジットとして支払い、そこから£0.5(約70円)/30分が引かれていきます。
試してみようとアプリを立ち上げると家の近くに自転車が置かれているピンが!行ってみたものの、それらしき自転車は見つかりませんでした。。場所的にもテストしている場所からは離れていたのでGPSの誤検知でしょうか。
oBikeはDockless型シェアバイクの中では比較的早くロンドンで稼働を始めましたが、歩行者用道路をふさぐように駐輪されていたことで撤去されたり等、ロンドンでDockless型シェアバイクを稼働していく上での課題が浮き彫りになっています。以下のツイートは撤去の告知を貼られたoBike自転車についてです。
So, Obike turned up in Hammersmith. And the bikes have already been served a highway obstruction notice. pic.twitter.com/jtJEFRPRsa
— Michael Passingham (@MrPassingham) 2017年7月14日
自転車は一時的に借りるだけなので、撤去されようが問題ないという捉え方をすることもできます。
そういったモラルの課題を解消するためにDockless型シェアバイクサービスには利用者スコアを持たせているケースが多いです(正しく利用することでスコアは上がり、問題行為によって下がります)。低いスコアだと機能に制限がかかったりするのでしょう。
oBikeでは確認できませんでしたが、ofoのように利用者が駐輪しても問題ない場所を案内することでも効果がありそうです。
Mobike - 中国発/Dockless型
2015年に中国の北京で始まったサービスです。イギリスではすでに7月にManchesterでサービスが開始しており、ロンドンでは今年の9月よりEarling地区でテスト導入予定です。
初期の稼働台数は750台で、oBikeのように£29をデポジットとして支払い、そこから£0.5/30分が引かれます。
ofo - 中国発/Dockless型
2014年に中国の北京で始まったMobikeと並ぶ中国発シェアバイクの雄です。9月7日よりShoreditch/Hackney地区で200台のテスト導入されています。
料金はデポジット無しで£0.5/30分です。
ofoについては実際に試してみたので後ほど詳しく紹介します。
勢力図まとめ
雑ですがロンドンにおけるDockless型シェアバイクの稼働地域分布を作ってみました。
今のところそれぞれのサービスが競合するように地域が被っていることはなく、自治体がロンドンでDockless型シェアバイクが機能するかテストするために一つのサービスとスモールに協働しているような印象を受けます。それにしてもイギリス発のDockless型シェアバイクが存在しないのは何故なのでしょうか。気になります。
ofoを実際に使ってみた
9月7日にロンドンのShoreditch/Hackney地区でテスト始動したofoを実際に使ってみたので、どのように借りるのか、その使用感を以下にまとめました。
自転車を見つけるまで
見つけるの大変です。
自宅からShoreditch/HackneyまではSantander Cyclesの自転車を使って30分程度の所要時間なのですが、結果的にofoの自転車を見つけるまでに2時間かかってしまいました。。。
上図のようにマップ上では自転車を確認できます。(Pのマークは推奨駐輪場所)
しかし、GPSの誤検知なのか自転車の位置情報のログが古いのかよく分かっていませんが、自転車のピンが立っている場所に行っても見つからず。そこまで離れていない距離を気軽にかつ安く移動するのがシェアバイクなのに、黄色い自転車一台を探すためのちょっとした冒険になってしまいました*4。
テスト稼働 & £0.5/30分のコストとはいえ、Santander Cycles(最低£2)は至るところにありますし、短時間で見つからないのは致命的です。
(ofoの自転車。OvergroundのHaggerston駅横の公園で見つけました)
乗車について
解錠
解錠は自転車についているQRコードをアプリでスキャンするだけです。完了すると自動的に解錠されます。Bluetoothを使用するためスキャン後も近くにいなければなりません。通信が途切れてしまった場合やBluetoothが使えない場合はアプリに表示される番号を手動で入力することで解錠が可能です。Santander CyclesはDockそばの自販機でクレカを差し込んで、チケットを発行して、それをDockの番号に入力して解錠、とステップが多いのでofoのようなQR解錠は非常に楽です。
乗り心地
好みにもよりますが、個人的にはSantander Cyclesのほうが好きです。理由はギアがついているからです(3段階)。ロンドンは坂がそこまで多くないとはいえ、全くないわけではないのでちょっとペダルを軽くしたいときにギアがあると意外と嬉しいのです。
ちなみに見た目はofoのほうが普通の自転車っぽいので好きです。
まとめ
中国を中心にアジアから爆発的に広がっているDockless型シェアバイクですが、ロンドンでももれなくシェアバイク群雄割拠の年になっています。
ここまでDockless型のサービスが広がっている理由は、
などが挙げられると思いますが、1つ目についてはロンドンに限って言えばSantander CyclesがDockの数も多く、普段使いする上では不便もしていません。Dockless型自転車がその先行優位を打ち破れるかどうかにはやや懐疑的ですが、今後も見つけたら継続的に使っていこうと思います。
余談ですが、降車した目の前にTwilioのロンドンオフィスらしきものがありました。
追記
- ofoやMobikeはサポートの範囲を拡大して、ロンドン中心部でも頻繁に見かけるようになりました (2017/12/25)
*1:シェアサイクルやレンタサイクルとも呼ばれますが、ここではシェアバイクに統一します
*2:港区の例: 東京・港区自転車シェアリング(レンタサイクル)
*3:アプリはCitymapperというイギリスの都市部にいたら欠かせない交通アプリです。Santanderのアプリは使い勝手がよくないのでサイクリングのときもこちらを使用しています
*4:見つけたときは思わず『おぉ・・・』と口に出してしまうくらいには
*5:何回か乗ってみたのですが、走行距離や時間が正しくトラックされていなかったり、ちょっとバグっているかもしれません