PM @ Roppongi

六本木でアプリのプロダクトマネージャーをしています。日々の学びや経験を残していきます。渋谷 -> 六本木 -> ロンドン -> 六本木

Laundrapp - ランドリー版Uber

イギリスに越してきてからはや一週間が経ちました。
8月の終わりでまだ暑さが残っているとはいえ30度を超えるようなことはなく、日本のような湿度も無いので非常に過ごしやすいです。
快晴の日が続いているのが何よりも素晴らしいですね・・・(冬のロンドンしか知らないので ^^;)

さて、ロンドンで生活する中で様々なアプリを利用していますが、今回紹介するプロダクトは洗濯代行アプリの『Laundrapp』です。

Laundrappについて

ランドリー版Uber

Laundrappは2014年4月に創業、2015年1月にローンチした比較的新しいサービスです。
洗濯代行アプリを運営しており『ランドリー版Uber』などと呼ばれることもあります。競合にはSpynihateironing.com、クローンサービスを量産することで有名なRocket Internet*1が展開するZipjetなどがあります。日本でも似たようなサービスとしてリネットがあります。

(Invitation Codeは『BRTJZD』です。イギリスにお越しの際にはぜひ・・・w)
laundrapp.com

"Free yourself from laundry and dry cleaing"

とトップページで謳っている通り、『洗濯とドライクリーニングの煩わしさを消費者から取り除く』ことを理念としています。洗濯やドライクリーニング業界のDisrupt(破壊)ですね。

CrunchBaseによると、これまでに1,255万ドル(1ドル100円換算で125.5億円)の資金調達を実施しています。2015年には競合である老舗のWashboxの買収も実施し、更に今年の初めにはオーストラリアとニュージーランドでもサービスをローンチ*2、2017年末までに更に13ヶ国でローンチしようとしている*3勢いのあるスタートアップです。

サービスの仕組みとビジネスモデル

雑ですが各プレイヤーとお金の動きを図示してみました。
黒がプレイヤーの動き、緑と赤がお金の動きでそれぞれ売上と費用です。

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サービスの大まかな仕組みは以下のとおりです。

  1. ユーザーはアプリから洗濯やクリーニングを発注
  2. 指定した時間に合わせてドライバーが回収に来る
  3. ドライバーはLaundrappと提携している優良ランドリー/クリーニングへ配送
  4. 発注後48時間でユーザーの手元に届くように洗濯/クリーニングを完了させる
  5. 発注時に指定した時間に合わせてドライバーがユーザーの元に届ける

このようにLaundrappが請け負っているのはユーザーとドライバーのマッチングだけであり、ビジネスモデル自体もUberと非常に似通っています。ただしドライバーにのみコストがかかるUberと異なって、Laundrappはドライバーに加えてランドリーやクリーニングを依頼する店舗へのコミッションでもコストがかかるはずなので、その分利益を出しづらいかと思います。

現時点でどのくらい利益が出ているのかは定かではありませんが、

  • 一回の発注の最低価格: £15 ... ①
  • ドライバーに支払う最低賃金: 時給£8.5 *4 + 諸費 = £10 ... ②

であることを鑑み、かつ

  • ドライバー1人が一時間で対応できる件数: 4件 *5 ... ③
  • ランドリー/クリーニング店に支払うコミッション: £10/件 *6 ... ④

と仮定すると、

1トランザクションあたりの利益 = ① - ②/③ - ④ = £2.5
1トランザクションあたりの利益率 = £2.5 / £15 = 16.7%

LyftUberが20%程度*7であることと比較すると、このぐらいに落ち着きそうでしょうか。もちろん利用ユーザーが増えることでドライバーが対応できる件数がある程度までは増やせるはずなので利益率はこれよりも増える可能性は十分にあると思います。

アプリの使い勝手

シンプルでどんなオプションがあるのかを見やすいです。

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洗濯物は痛みやすいものがあったり、色落ちしたりするものがあったりと考慮することが多いですが、コースの詳細にFAQを設けてひとつひとつ丁寧に書かれているのでそういった不安が払拭されます。一番右の画面は発注の画面です。住所や回収/お届けの時間を入力します。夜遅く(一番遅くて22-23時)のオプションがあるのが非常にありがたいです。今回は£12(6kgまで)のランドリープランでお願いしました。

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左と真ん中は回収/お届け時の画面です。Uberっぽい。ドライバーの到着予定時刻が逐一更新されます。少し厄介な点として、ドライバーの到着は通知されるものの現時点では連絡手段がありません。そのため外に出てLaundrappの車を確認するまでは、ちゃんと取引できるかどうか少し不安になります。

取引後の評価も一応あるのですが、ドライバーを評価するためのものではなく、アプリのレビューを増やすための導線のようです。

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(Laundrappの専用車)

回収の際に専用の袋を渡してくれるので、それに自分が出したい衣類を入れたら完了です。あとはドライバーがランドリーまで持っていってくれるので、洗濯されたものが手元に戻ってくるまで待ちます。

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洗濯されて戻ってきた衣類は専用の布袋に入っています。なんとこの袋、貰えるというのだから嬉しいです。渡英する際の手荷物に洗濯物入れなど加える余裕もなかったので・・・w

コインランドリーとの比較

自宅に洗濯機が無い場合はLaundrapp一択です。(競合サービスを使っていないので他は何とも言えませんが)

家の近くのコインランドリーも利用したのですがとにかく大変です。まず溜まりに溜まった衣類を洗うためにランドリーへ運び洗濯機へ投入します。洗濯には40分かかるので一度家へ戻り、微妙な空き時間を過ごします。時間が経ったら再度ランドリーに戻り、今度は乾燥機にかけるのですが、これまた30-40分かかるので家に戻る羽目になります。もちろん畳むのは自分です。費用は合計£10程度でした。

対してLaundrappはこれらを一手に引き受けてくれます。しかも畳んで返ってきます。唯一自分で行うのは洗濯に出したい衣類を袋に詰め込んでドライバーに渡すだけです。利用するための最低価格は£15ですが、クーポンを使っていたこともあり、自分でランドリーで洗濯したときと同様£10で済ませられました。素晴らしい。

イギリスのランドリー事情

最後にイギリスのランドリー事情について軽く少し触れたいと思います。

現在イギリスには約3,000店舗のコインランドリーがあり、約13,000店舗あった最盛期の1980年代からかなり減少しているようです*8。それでも旅行者や短期出張者、洗濯機の買えない貧困層のランドリー需要は一定量あるようで、今年の店舗数は昨年から4.2%ほど増加しています。

LaundrappやZipJetのようなDoor-to-Doorサービスは洗濯に出して返却に2日程度要するため、

  • コインランドリー: すぐに洗濯が必要な層 (主に短期旅行者/出張者) や貧困層
  • Door-to-Door: 洗濯する手間が惜しいビジネスマン、短中期の出張者

というようなセグメントに分けられて、上記の一定量の需要を奪い合うことになるのでしょうか。それだけではちょっと限界がありそうですよね。クリーニングについては今回触れていませんが、そちらがどの程度Door-to-Doorサービスに移行していくかが今後のビジネスを左右するような気がしています。

*1:「クローン」サービスを展開する謎の企業「Rocket Internet」とは : まだ東京で消耗してるの?

*2:Laundromap | On-demand dry cleaning and laundry service

*3:Laundrapp to launch washing service in 15 more countries

*4:London Delivery Driver Jobs | Apply Online | Laundrapp

*5:2回利用しましたが、ピックアップの通知から実際の回収までにだいたい15分程度はかかっているため。一回の停車で一件と仮定

*6:実際にランドリーを使ったときの費用感。仮暮らしの家に洗濯機が無かったので経済的に辛かったです・・・

*7:How Lyft Works: Insights into Business & Revenue Model - Juggernaut- Powering On Demand Apps

*8:Laundrapp to launch washing service in 15 more countries