PM @ Roppongi

六本木でアプリのプロダクトマネージャーをしています。日々の学びや経験を残していきます。渋谷 -> 六本木 -> ロンドン -> 六本木

ロンドンのシェアバイク事情 - ofoに乗ってみた

ロンドンに来て1ヶ月が経ちました。
先日銀行口座の開設ができ、デビットカード兼キャッシュカードが郵便で届きました。日本で発行したクレジットカードや現金を使ったこれまでの不便な生活にやっと終止符を打てます・・・

イギリスはクレジット社会な上に、店頭決済にはコンタクトレス(かざすだけの)カードが主流になっているなど、ものが揃っていれば決済が非常に楽になっています。が、詳しくはまた別の機会に説明できればと思います。

今回のトピックはロンドンのシェアバイク*1事情についてです。

シェアバイクについて

時間貸し自転車

シェアバイクは一言で表現すると、時間貸し自転車のことです。
借りたいときにだけ自転車を使って、使った時間だけ料金を支払います。日本ではドコモが自治体と一緒に実施しているシェアリングサイクル*2などが有名です。

つい先日、メルカリとDMMもシェアバイク事業に参入するとの報道があり、ますます盛り上がりを見せている市場です。

jp.techcrunch.com

Dock型とDockless型

シェアバイクは大きく二つの種類に分けられると思っています。『Dock型』と『Dockless型』です。Dock型は専用駐輪スペース間を専用の自転車を使って移動できるモデル。Dockless型は専用の自転車を使う点ではDock型と同じですが、どこで借りてもOK、かつ乗り捨て可能なモデルです。

昨年頃から特に中国で爆発的に流行っているのはDockless型のシェアバイクで、街中の至るところで黄色や赤色の自転車が置かれている光景を目にするようです。(行って体験してみたい・・・)

ロンドンのシェアバイクプレイヤー

ロンドンではこれまでDock型のSantander Cyclesの独擅場でした。ところが今年、特にここ数ヶ月でその形勢に変化が起ころうとしています。Dockless型のプレイヤーが次々と海外から押し寄せてきているのです。

Santander Cycles - ロンドン最大手/Dock型

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ロンドンにおけるシェアバイクは、2010年より交通局(Transport for London)が運営しているSantander Cyclesが有名です。

£2(280円)支払うことで24時間自転車を借りられます。乗車から最初の30分は無料で走れるので、30分に一回乗り継ぎをすれば実質£2で一日中利用できます。Dockの数も多いので、見つける手間はそこまでかかりません。

現在11,000台以上が稼働しています。

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上図で見てのとおり、至る場所にDockが存在しています。数字はDockに止まっている自転車の台数です。*3

oBike - シンガポール発/Dockless型

今年の1月にシンガポールで始動した乗り捨て型シェアバイクです。ロンドンでは2017年7月からHammersmith地区を中心にサービスをテスト導入中で、現在400台が稼働しています。始動から半年少しで既に10ヶ国以上で稼働しているのは驚きです。

£49(約7,300円)をデポジットとして支払い、そこから£0.5(約70円)/30分が引かれていきます。

試してみようとアプリを立ち上げると家の近くに自転車が置かれているピンが!行ってみたものの、それらしき自転車は見つかりませんでした。。場所的にもテストしている場所からは離れていたのでGPSの誤検知でしょうか。

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oBikeはDockless型シェアバイクの中では比較的早くロンドンで稼働を始めましたが、歩行者用道路をふさぐように駐輪されていたことで撤去されたり等、ロンドンでDockless型シェアバイクを稼働していく上での課題が浮き彫りになっています。以下のツイートは撤去の告知を貼られたoBike自転車についてです。

自転車は一時的に借りるだけなので、撤去されようが問題ないという捉え方をすることもできます。

そういったモラルの課題を解消するためにDockless型シェアバイクサービスには利用者スコアを持たせているケースが多いです(正しく利用することでスコアは上がり、問題行為によって下がります)。低いスコアだと機能に制限がかかったりするのでしょう。

oBikeでは確認できませんでしたが、ofoのように利用者が駐輪しても問題ない場所を案内することでも効果がありそうです。

Mobike - 中国発/Dockless型

2015年に中国の北京で始まったサービスです。イギリスではすでに7月にManchesterでサービスが開始しており、ロンドンでは今年の9月よりEarling地区でテスト導入予定です。

初期の稼働台数は750台で、oBikeのように£29をデポジットとして支払い、そこから£0.5/30分が引かれます。

ofo - 中国発/Dockless型

2014年に中国の北京で始まったMobikeと並ぶ中国発シェアバイクの雄です。9月7日よりShoreditch/Hackney地区で200台のテスト導入されています。

www.wired.co.uk

料金はデポジット無しで£0.5/30分です。
ofoについては実際に試してみたので後ほど詳しく紹介します。

urbo - アイルランド発/Dockless型

アイルランド発のシェアバイクで、10月よりロンドンの北東部(Waltham Forest)でのテスト稼働が決まっているようです。

www.walthamforest.gov.uk

勢力図まとめ

雑ですがロンドンにおけるDockless型シェアバイクの稼働地域分布を作ってみました。

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今のところそれぞれのサービスが競合するように地域が被っていることはなく、自治体がロンドンでDockless型シェアバイクが機能するかテストするために一つのサービスとスモールに協働しているような印象を受けます。それにしてもイギリス発のDockless型シェアバイクが存在しないのは何故なのでしょうか。気になります。

ofoを実際に使ってみた

9月7日にロンドンのShoreditch/Hackney地区でテスト始動したofoを実際に使ってみたので、どのように借りるのか、その使用感を以下にまとめました。

自転車を見つけるまで

見つけるの大変です。

自宅からShoreditch/HackneyまではSantander Cyclesの自転車を使って30分程度の所要時間なのですが、結果的にofoの自転車を見つけるまでに2時間かかってしまいました。。。

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上図のようにマップ上では自転車を確認できます。(Pのマークは推奨駐輪場所)
しかし、GPSの誤検知なのか自転車の位置情報のログが古いのかよく分かっていませんが、自転車のピンが立っている場所に行っても見つからず。そこまで離れていない距離を気軽にかつ安く移動するのがシェアバイクなのに、黄色い自転車一台を探すためのちょっとした冒険になってしまいました*4

テスト稼働 & £0.5/30分のコストとはいえ、Santander Cycles(最低£2)は至るところにありますし、短時間で見つからないのは致命的です。

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(ofoの自転車。OvergroundのHaggerston駅横の公園で見つけました)

乗車について

解錠

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解錠は自転車についているQRコードをアプリでスキャンするだけです。完了すると自動的に解錠されます。Bluetoothを使用するためスキャン後も近くにいなければなりません。通信が途切れてしまった場合やBluetoothが使えない場合はアプリに表示される番号を手動で入力することで解錠が可能です。Santander CyclesはDockそばの自販機でクレカを差し込んで、チケットを発行して、それをDockの番号に入力して解錠、とステップが多いのでofoのようなQR解錠は非常に楽です。

乗り心地

好みにもよりますが、個人的にはSantander Cyclesのほうが好きです。理由はギアがついているからです(3段階)。ロンドンは坂がそこまで多くないとはいえ、全くないわけではないのでちょっとペダルを軽くしたいときにギアがあると意外と嬉しいのです。

ちなみに見た目はofoのほうが普通の自転車っぽいので好きです。

降車/精算について

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ofoの自転車含め、Dockless型の自転車にはGPSが付いています。次に乗車する人が場所を確認するためであったり、盗難や、エリア外で降車されてしまった場合に回収するためですね。

自転車のロックを下ろすと自動的に精算されます。また、走行ルートやどのくらいの距離を走ったか、消費カロリーなどのサマリーも表示してくれます。

乗った距離に関係なく£0.5/30分請求されますが、今回はクーポンのおかげかお金を払うことなくofoを体験することができました。*5

まとめ

中国を中心にアジアから爆発的に広がっているDockless型シェアバイクですが、ロンドンでももれなくシェアバイク群雄割拠の年になっています。

ここまでDockless型のサービスが広がっている理由は、

  • 使いたいときに借りればいいという"シェア"思想が広がっている
  • しかも時間あたりの料金が安価
  • GPSBluetoothを始めとした通信端末の導入コストが低下

などが挙げられると思いますが、1つ目についてはロンドンに限って言えばSantander CyclesがDockの数も多く、普段使いする上では不便もしていません。Dockless型自転車がその先行優位を打ち破れるかどうかにはやや懐疑的ですが、今後も見つけたら継続的に使っていこうと思います。

余談ですが、降車した目の前にTwilioのロンドンオフィスらしきものがありました。

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追記

  • ofoやMobikeはサポートの範囲を拡大して、ロンドン中心部でも頻繁に見かけるようになりました (2017/12/25)

*1:シェアサイクルやレンタサイクルとも呼ばれますが、ここではシェアバイクに統一します

*2:港区の例: 東京・港区自転車シェアリング(レンタサイクル)

*3:アプリはCitymapperというイギリスの都市部にいたら欠かせない交通アプリです。Santanderのアプリは使い勝手がよくないのでサイクリングのときもこちらを使用しています

*4:見つけたときは思わず『おぉ・・・』と口に出してしまうくらいには

*5:何回か乗ってみたのですが、走行距離や時間が正しくトラックされていなかったり、ちょっとバグっているかもしれません