PM @ Roppongi

六本木でアプリのプロダクトマネージャーをしています。日々の学びや経験を残していきます。渋谷 -> 六本木 -> ロンドン -> 六本木

イギリスのカード事情③ - Curve: オールインワンカード

相変わらず天候の悪いロンドンですが、気温は徐々に上がってきている気がします。比べて東京は恐ろしいほど気温が低くて、また雪の日も多いようで・・・スノボ好きの筆者にとっては羨まし(ry

さて、今回はイギリスでのクレジットカードとその周辺のあれこれを紹介しようと思っていたのですが、記事を書こうとしていた矢先、便利すぎる代物(カード)が手に入ったので寄り道してそちらを紹介しようと思います。

Curve - オールインワンカード

Curveは複数枚のクレジットカードやデビットカードをアプリ上で登録して、一つのカードとして持ち歩けるオールインワンカードです。カードで財布が膨らむ人にとってはとてもありがたいプロダクトです。(その他のメリットは後述します)

www.imaginecurve.com
(招待コード: 3UK6D , £5獲得できます)

2015年にロンドンで設立された会社で、2016年2月より個人事業主・スモールビジネス向けにClosed Beta版をリリース、2017年末から一般公開されました。*1

この界隈に明るい方だと一昔前に少し盛り上がったCoin, Plastc, SWYP, Stratos, Fuzeなどを思い出されるかもしれません。それらプロダクトとCurveの比較も後述しています。

Curveについて

機能

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Curveの機能は至ってシンプルです。
前回の記事で紹介したMonzoのようにカードとアプリが密に連携しています。

サービスに登録するとCurveのデビットカードが送られてくるので、アプリでアクティベーションして、Curveで使いたいクレジット/デビットカードを登録するだけです。
あとはCurveのカードを持ち歩いて支払いの際に普通のカードと同様に決済をします。もちろんコンタクトレス対応。

決済をしたいカードを切り替えたい場合は、アプリでタップして指定するだけです。

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(画像について)

  • 左: カードは(たぶん)無限に登録できます。日本のクレジットカードも登録できて、しかもシルエットまで自動的に取り込まれるので驚きです。iOSのような挙動でカードを入れ替えられたり削除したりできます。
  • 中: 各カードでの取引の詳細も確認できます。ちなみにCurveのマークがついているカードが現在決済で使用中のものです。MonzoやRevolutのようなプリペイドカードも登録可能です。
  • 下: カードの使用を切り替えたい場合は、使いたいカードの上でタップするだけです。即時に切り替えられます。

全てのカード決済をまとめて見ることも可能です。
また、MonzoやRevolutのように決済対象の種類(食事、日用品、など)も表示されます*2
割り勘機能はありませんが、MonzoやRevolutのアプリ上で実施できるので問題ありません。

決済の仕組み

各種カードを一枚のカードに紐付けてそれだけで決済を実現しているCurveですが、どのように機能しているのでしょうか。

詳細には把握できていませんが、おおよそ以下のようなフローで決済が行われているのだと推測しています。

  1. ユーザーがCurveのカードを使って決済をする。このタイミングではCurveが支払いを実施
  2. CurveがCard Issuerに対してPayPalを介して支払いを請求*3
  3. 支払い完了 (Card Issuerの取引履歴で支払いが確認できる状態)

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ちなみにMonzoなどIssuerのサービスから取引履歴を確認してみると、Curveを介して決済した取引には必ず"CRV"というPrefixがついています。そのため、どの決済をCurveで実施したかはIssuer側の履歴からも把握できます。

ビジネスモデル

Curveは基本使用料を無料としていますが、ATM引き出しと海外為替にのみ手数料がかかります。

また独自のリワード(報酬)プログラムを持っており、クレジットカード会社のように加盟店手数料を得ているのではないかと見ています。

例えば、イギリスでは薬局大手のBoots*4Argos、GAPなど*5。決済額の1.5% ~ 3%のキャッシュバックでかつ有名店の加盟も多いので使い勝手がいいですね。

Curveを使うメリット/デメリット

メリット
  • 財布がカードでかさばらない
  • 元のクレジットカードやデビットカードは家に置いておいても良いため安全 (Curve自体もアプリからロック可能)
  • つまり、もしCurveカードを紛失しても元のカードは手元に残っているため安心
  • Amex登録できるため、Master CardやVISAの決済しか受けつけていないお店でも使用可能(?)*6
デメリット
  • 何か決済で問題が発生したときに払い戻しをしてもらえない可能性が高い (PayPalなどのThird Partyを介した取引はSection 75の対象外になるため。通常のChargebackには対応している*7 )
  • クレジットカード会社の元々のリワードプログラムが利用できなくなる (例: 通常1.5%のポイントが"ユニクロ"で購入の場合は2倍!など。取引先が常にPayPalになるため)

一見、カードが多い人だけにメリットがあるように思えますが、元のカードを保護しておくという意味では一枚しかクレジットカードを持っていない人でも使う価値があると言えます。

前述のとおり、元のリワードプログラムは使えなくなりますが、Curveにも独自のリワードが存在するのでそこまで大きなデメリットだとは思いません。払い戻し問題は少しネックなので、高額な決済をする場合は元のカードを使ったほうが無難そうですね。

従来のオールインワンカードとの違い

サブスクリプションモデル vs 基本無料

Coin, Plastc, SWYP, Stratos, Fuzeのうち、SWYPとFuze以外はすでにサービスの提供を終了してしまっているのですが、これらサービスのカードに共通していることはサブスクリプションモデル(定期購入型モデル)でした。*8

対してCurveは基本的に無料で利用できます。

では、なぜ従来のサービスはサブスクリプションモデルだったのでしょうか。Curveのように基本使用料を無料にはできなかったのでしょうか。

それは発行するカードに大きな違いがあったからだと見ています。

コストのかさむ特殊なカード vs 通常のデビットカード

前述のCoin, Plastc, SWYP, Stratos, Fuzeは、使用するクレジット/デビットカードの切り替えをスマホ等を介さずに実施するために、サービスのカードが通常のクレジット/デビットカードと異なる特殊なものを採用しています。

こちらはStratosのコンセプトムービーです。

www.youtube.com

Squareのようなカード読み取り端末が登場したり、カード自体も振って切り替えたり等など・・・見るからにコストがかかりそうですよね。

対してCurveは一般的なデビットカードです。

全くコストがかからないわけではないですが、少なくとも電子カードやその周辺端末と比較すると費用は抑えられそうです。

かつCurveは基本的に無料でユーザーの数は集まりやすいため、ユーザーが使いさえすれば取引に応じた手数料*9で少しずつ売上を上げていけるはずです。

他にも電子カードのデメリットとして、バッテリーの持続時間や登録できるカード数に上限があったりなど、ユーザビリティの観点でもサブスクリプションするには少し勇気のいるプロダクトのだったのかもしれません。

まとめ

Curveについて

  • 複数枚のクレジット/デビットカードを一枚にまとめられるカード
  • 見た目は一般的なコンタクトレスデビットカード
  • そのため財布のかさばりを無くせる
  • アプリで簡単にカードの追加/切り替えが可能
  • 決済対象に応じて独自のリワードプログラムあり
  • 高額決済の場合は元のカードを使ったほうが良さそう
  • 基本的には無料

届いてからまだ一週間ほどしか使用していませんが、これまでのところ元のカードたちは一切使わずに生活できています。とにかく便利です。イギリスにお住まいの方はぜひ。

これまでのオールインワンカードはどれもあまり上手くいかずに撤退しているものが多いため、Curveには成功してほしいものです。

*1:アプリ自体は一般公開前からダウンロード可能でしたが、登録後は『対象外なので待っててね』と表示されているだけでした。

*2:位置情報はありません

*3:ここでPayPalとしているのは、Revolut上の取引履歴でCurve経由の決済にPayPalのロゴがついていたため

*4:日本にも以前あったようですが撤退しました

*5:Curve Rewards | Curve

*6:Amexを持っていないので試していませんが、理論上できそう?

*7:Am I covered by section 75 of the Consumer Credit Act? – Curve

*8:Stratosは新規カードの発行を終了。SWYPも元々のモデルは終了している模様。

*9:前述のとおり、現在はATM引き出し手数料と海外為替手数料のみ